2014.03.13.Thu

「心中・恋の大和路2014」

    

    
        壮一帆×愛加あゆ
  
ミュージカル「心中・恋の大和路」〜近松門左衛門「冥途の飛脚」より〜
脚本/菅沼潤 演出/谷正純
近松門左衛門の代表的な世話物の一つで、封建的な義理人情に縛られた中で、純粋な愛情を貫く男女の愛を美しく哀しく歌い上げた作品。
1979年に瀬戸内美八主演により絶賛され、以後、1982年に再び瀬戸内美八主演、1989年に剣幸主演、1998年に汐風幸主演で上演されている、再演希望の多い日本物の傑作の一つです。

大和の新口村(にのくちむら)から大阪の飛脚問屋・亀屋に養子に入り、当主として差配を振るう亀屋忠兵衛
若く、男ぶりも良いと噂される忠兵衛は、新町の遊郭・槌屋(つちや)の遊女・梅川と馴染みとなったことから、愛ゆえにその身を落としていく――。
新町の遊郭・槌屋の遊女、梅川に惚れ込む忠兵衛は、同じ槌屋の花魁・かもん太夫を慕う亀屋の手代(てだい)、与平を一目太夫に逢わせてやろうと、廓遊びに誘い出す。
忠兵衛の計らいと梅川の口添えで願いの叶った与平は、まもなく身請けされるというかもん太夫から、志の簪を渡されるのだった。
その夜、忠兵衛は、他の客が梅川を身請けするための手付金を納めたことを聞かされる。
梅川恋しさに出来ることなら身請けしたいとまで考えるようになっていた忠兵衛。
だが遊女の身請け金など、一介の商人である自分に到底用立てできるはずもない。
忠兵衛以外の男に嫁ぐくらいなら、死んだほうがましだと喉元に刀を突き立てる梅川の姿に、片時たりとも離れたくないという想いを強くした忠兵衛は、なんとか手立てはないものかと思案に暮れるのだった…。
翌日、八右衛門が、江戸から届いているはずの銀五十両を受け取りに亀屋を訪れる。
だが、その八右衛門に渡すべき金は、昨晩、忠兵衛が梅川の身請け金の一部として槌屋に支払ってしまっていた。
ひととき五十両を貸しておいて欲しい、たった一人の友達の金だと思えばこそ甘えたのだと告げる忠兵衛。
人の金を横流しにするという、商人にとってあってはならない振る舞いに、八右衛門は怒りをあらわにするが、忠兵衛の梅川への熱い想いを汲み、渋々、忠兵衛の義母妙閑の前で偽の証文を書く。
幻の恋の道は永遠の闇に続くだけ…八右衛門は、商人の魂を失いかけている忠兵衛を危惧していた。
その夜、忠兵衛は迷っていた…。
手には堂島の侍屋敷に届けるべき三百両。
この金があれば、愛しい梅川を身請けできるのだ。
しかし、小判の封印を切ってしまえば死罪は免れない…罪の重さにおののきながらも、梅川を思い切れない忠兵衛。
その足は、いつしか新町・槌屋へと向かっていた。
忠兵衛と共に生きたい…梅川もまた、その想いを断ち切ることが出来ずに悩んでいた。
梅川の切ない思いを慮るかもん太夫は、女の幸せは目の前の色恋ばかりではない、忠兵衛が無理を重ねて請け出したとしてもそれは、新たな不幸となって返ってくるだろうと話す。
しかし梅川は、たとえ長く生きられずとも生きている限り、忠兵衛と一緒にいたいのだと聞き入れようとはしなかった。
同じ夜、八右衛門が槌屋を訪ねてくる。
友人として忠兵衛を真っ当な道へ戻したいと考えた八右衛門は、梅川の手付として忠兵衛が支払った金は、自分の金だと告げにきたのだった。
盗んだ金を受け取れば、槌屋も含め新町中に災いが及んで面倒なことになる。
今後、忠兵衛が来ても追い出すようにと大声で騒ぎ立てる八右衛門。
全ては、忠兵衛を思えばこそ…。
しかし、折悪くその場に現れた忠兵衛は、八右衛門が自分を裏切ったと勘違いする。
「しみったれが!そんなに惜しけりゃ、たった今返してやる」と、懐から小判包みを取り出す忠兵衛。
そして…八右衛門、梅川、与平らが必死に止めるのも聞かず、遂に小判の封を切ってしまうのだった…。
梅川の身請け金だと言い、改めて槌屋のおかみ、お清に封印を切った小判を渡す忠兵衛。
金は、養子縁組の持参金として持ってきたものを、義母の許しを得て融通したもので素性の知れぬ金ではないと騙った忠兵衛は、すぐにも梅川を連れて出たいとお清に頼む。
忠兵衛の言葉に梅川は心弾ませるのだった。
しかし、忠兵衛が他人の金に手を付けた事実を知った梅川は、全ては自分の為にしたことだと、自らを責める。
罪を犯し、追われる身となった二人…だが忠兵衛は、たとえ世間が許さずとも、梅川と添い遂げて見せると意を決する。
人目を忍び、忠兵衛と梅川は、手を取り合って槌屋をあとにするのだった。
忠兵衛が不始末を起こし、遊女を連れて逃げた――。
亀屋の店先では、事の顛末を聞かされた宿衆たちが集まり、商いの信用を取り戻す為にも自分たちの手で忠兵衛を捕らえようと話し合っていた。
八右衛門もまた、友人として忠兵衛の行方を追うことにする。
忠兵衛たちの行き先は、おそらく大和新口村の実家。
彼らはそれぞれに大和路を急ぐ…。
忠兵衛が目指した先は、実家、新口村の父孫右衛門のもと。
二人で歩む大和路までの道中は、追っ手を警戒しながらも、時には心はずむものだった。
しかし宿衆たちの手はすでに新口村にも廻り、孫右衛門の家には近寄れない状態にあった。
忠兵衛と梅川は助けを求めて忠兵衛の幼友達・忠三郎の家を訪ねる。
そんな中、忠兵衛の父、孫右衛門が通り掛かる。
つまずいて高下駄の鼻緒を切ってしまった父のもとへ行こうとする忠兵衛を制し、梅川は孫右衛門に駆け寄る。
梅川と顔を合わせた孫右衛門はすぐさまその女性が、忠兵衛の想い人である事を察する。
あくまでも他人事のように話し、罪人にまで身を落とした息子を嘆く一方で、梅川の痛々しい姿を気遣う孫右衛門。
あの人に、一目逢ってあげてもらえないかという梅川の頼みを頑なに拒みつつも、孫右衛門は、どんなに落ちぶれてもいい、逃れて生き延びて欲しいと切なる願いを梅川に託すのだった。
傍で身を隠し、孫右衛門と梅川のやり取りを一部始終見ていた忠兵衛は、とり返しのつかない親不孝を嘆き、涙する。
追手はすぐそこまで迫っていた。
そこへ忠三郎たちと共に八右衛門が…。
捕らえに現れたのかと八右衛門を非難する忠兵衛に、「どんな片隅からでもええ、生きていると言う便りをくれよ」と言葉を掛ける八右衛門。
忠兵衛は、友の深い情を胸に留め、梅川の手を取り果てない旅路を急ぐのだった…。
「先の世までもいっしょに歩いていこう」…。
この世にただひとつ、愛し愛された忠兵衛と梅川は、大和路の深い雪の中に引き裂かれることなく、静かに温かく閉じ込められたのだった――。

 

  
壮あゆ早くもプレサヨナラ公演。
お披露目から、なぜか報われない恋物語が多かった2人。悲恋に不倫についに心中と…。
 
2014年3月14日〜24日(シアター・ドラマシティ)
4月15日〜21日(日本青年館)での公演スケジュール。
 
ハイ
配役比較
2014版 1999版 1998版 1989版 1982版 1979
亀屋忠兵衛
(大坂の飛脚問屋・亀屋の主)
壮一帆汐風幸汐風幸剣幸瀬戸内美八瀬戸内美八
丹波屋八右衛門
(忠兵衛の友人。米問屋)
未涼亜希/朝海ひかる/汐美真帆/桐さと実/峰さを理/峰さを理
忠三郎
(忠兵衛の旧友)
帆風成海/美郷真也/飛鳥裕/立ともみ/立ともみ/立ともみ
おかね
(忠三郎の女房)
愛すみれ/森央かずみ/森央かずみ/京三紗/藤京子/藤京子
孫右衛門
(忠兵衛の実父)
汝鳥伶(専科)/鈴鹿照(専科)/未沙のえる(専科)/深山しのぶ(専科)/淡路通子(専科)/淡路通子(専科)
妙閑
(亀屋の後家。忠兵衛の養母)
五峰亜季(専科)/朝みち子(専科)/未沙のえる(専科)/朝みち子/淡路通子(専科)/淡路通子(専科)
伊兵衛
(亀屋の番頭)
帆風成海/美郷真也/飛鳥裕/立ともみ(専科)/立ともみ/立ともみ
与平
(亀屋の手代)
月城かなと/未来優希/未来優希/波音みちる/山城はるか/大浦みずき
三太
(亀屋の丁稚)
真地佑果/麻愛めぐる/麻愛めぐる/いつき吟夏/夏美よう/鯉のぼる
庄介
(亀屋の丁稚)
永久輝せあ/蘭香レア/彩吹真央/大海ひろ/紫苑ゆう/朝香じゅん
おまん
(亀屋の女中)
天舞音さら/愛燿子/愛燿子/千田真弓/宝城さゆり/紫城いずみ
  
藤屋
(飛脚宿衆)
香綾しずる/汝鳥伶(専科)/汝鳥伶(専科)/汝鳥伶/洋ゆり/新城まゆみ
丸十
(飛脚宿衆)
透真かずき/天希かおり/葵美哉(専科)/葵美哉/鯉のぼる/洋ゆり
嶋屋
(飛脚宿衆)
久城あす/すがた香/穂高ゆう/大峯麻友/孝まりお/孝まりお
もず屋
(飛脚宿衆)
大澄れい/冴月晃/愛希朱里/旭麻里/寿美夏子/寿美夏子
伊勢屋
(飛脚宿衆)
央雅光希/夕貴真緒/夕貴真緒/穂高つゆき/高瀬美亜/萬あきら
角屋
(飛脚宿衆)
朝風れい/蒼海拓/蒼海拓/若木萌/克美仁/
  
梅川
(新町の遊郭・槌屋(つちや)の遊女)
愛加あゆ貴咲美里貴咲美里こだま愛姿晴香遥くらら
かもん太夫
(槌屋の花魁)
大湖せしる/灯奈美/灯奈美/邦なつき/桐生のぼる/東千晃
鳴渡瀬
(なるとせ。槌屋の遊女)
透水さらさ//紺野まひる/舞希彩/湖城れいか/月城千晴
千代歳
(ちよとせ。槌屋の遊女)
桃花ひな/花純風香/花純風香/紫とも/秋篠美帆/山奈由佳
お清
(槌屋の女将)
舞園るり/京三紗(専科)/京三紗(専科)/木花咲耶(専科)/木花咲耶/木花咲耶
おたつ
(槌屋の遣手)
杏野このみ/飛鳥井まり/飛鳥井まり/京三紗/藤京子/藤京子
幇間
()
真條まから/南帆香凜/南帆香凜/峰央奈奈/未央一/
 
甚内
(堂島の侍屋敷の若侍)
叶ゆうり/すがた香/すがた香/詩織みき/吹雪仁美/朱鷺のぼる
村娘
愛すみれ//愛燿子/瞳まりあ//紫城いずみ
女の子
有沙瞳//松雪可奈子/紫とも//
  
1979年、星組で瀬戸内美八×遥くららトップコンビによりバウホール初演。
 1982年、星組で瀬戸内美八×姿晴香トップコンビによりバウホール再演。
 1989年、月組で剣幸×こだま愛トップコンビによりバウホール再演。
 1998年、雪組で汐風幸×貴咲美里コンビによりバウホール再演。
 1999年、雪組で汐風幸×貴咲美里コンビにより日本青年館で続演。
 
  
   

雪組「心中・恋の大和路」
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